サウナの醍醐味として、熱々のサウナ室から出た直後に水風呂へ飛び込む、あの瞬間を挙げる人は少なくありません。しかし、この急激な温度変化が、頭皮や髪に悪影響を及ぼすのではないか、という懸念の声も聞かれます。特に、頭まで水風呂に潜ることに対して、抵抗を感じる人もいるようです。この疑問を解き明かす鍵は、血管の動きにあります。サウナの熱によって拡張した血管は、水風呂の冷たい刺激によって一気に収縮します。そして、水風呂から出て休憩すると、身体は平常の体温に戻ろうとして、再び血管を拡張させます。この一連の血管の収縮と拡張の繰り返しは、血管のポンプ機能を鍛える「血管トレーニング」とも言われ、全身の血行を促進する効果があるとされています。血行の改善は、頭皮に栄養を届ける上でプラスに働くため、この温冷交代浴は、理論上は頭皮環境にとっても有益な行為と考えられるのです。では、なぜ「悪い」というイメージがあるのでしょうか。一つには、心臓への負担が挙げられます。高血圧や心疾患のある方が急に冷たい水に入るのは危険であり、そのイメージが全体に波及している可能性があります。もう一つは、水風呂の水質の問題です。不特定多数の人が利用する水風呂の水が、もし清潔に保たれていなければ、頭皮に雑菌が付着するリスクもゼロではありません。また、濡れた髪をそのまま長時間放置すれば、雑菌が繁殖しやすくなるのは事実です。したがって、水風呂が頭皮に悪いかどうかは、その行為自体よりも、個人の健康状態と、その後のケアに大きく左右されると言えます。健康な人が、清潔な水風呂を利用し、サウナ後にはしっかりと髪を洗い、乾かすという手順を踏むのであれば、過度に心配する必要はないでしょう。むしろ、血行促進というメリットを享受できる可能性の方が高いと言えるかもしれません。