サウナの熱気と静寂に包まれる時間は、多くの人にとって至福のひとときです。しかし、その一方で「サウナに入りすぎるとハゲる」という、なんとも気がかりな噂を耳にしたことがある人も少なくないでしょう。この噂は果たして本当なのでしょうか。結論から言えば、サウナに入ること自体が、薄毛や抜け毛の直接的な原因になるという医学的根拠はありません。男性の薄毛の多くは、AGA(男性型脱毛症)という遺伝や男性ホルモンに起因するものであり、サウナの熱がこれを引き起こしたり、進行させたりするわけではないのです。しかし、だからといって全く無関係かと言えば、そうとも言い切れません。問題となるのは、サウナの「入り方」です。サウナ室内の高温と乾燥した空気は、髪と頭皮にとって決して優しい環境ではありません。髪の主成分であるタンパク質は熱に弱く、長時間高温に晒され続けるとダメージを受け、パサつきや切れ毛の原因になります。また、頭皮が過度に乾燥すると、バリア機能が低下し、かゆみやフケといったトラブルを引き起こす可能性があります。さらに、サウナでかいた汗や皮脂を長時間放置することも問題です。これらが毛穴に詰まると、雑菌が繁殖し、頭皮環境の悪化を招きます。つまり、サウナそのものが悪なのではなく、間違った利用法が頭皮に負担をかけ、結果として健やかな髪の育成を妨げる一因になりうる、ということです。サウナの恩恵を享受しつつ、髪へのリスクを回避するためには、正しい知識と適切なケアが不可欠なのです。