私がAGA治療を始めたのは三十代半ばの頃で最初はプロペシアとミノキシジルの併用で劇的な効果を実感し一年も経つ頃には薄かった頭頂部が嘘のようにフサフサになり周りからも若返ったと褒められるまでになりましたがその成功体験が慢心を生み毎月一万五千円ほどの治療費を払い続けることが馬鹿らしく感じられるようになってしまったのが全ての過ちの始まりでした。髪が生え揃ったのだからもう薬を飲まなくても維持できるだろうあるいは少し減らしても大丈夫だろうという素人判断で最初は一日一回の服用を二日に一回にしやがては完全に止めてしまいましたが最初の二ヶ月ほどは特に変化がなくやっぱり止めても大丈夫だったんだと自分の判断を自画自賛さえしていました。しかし悪夢は三ヶ月目を過ぎたあたりから静かにそして確実に忍び寄ってきました。最初は朝起きた時の枕元の抜け毛が少し増えたかなという程度の違和感でしたがそれが洗髪時の排水溝に溜まる毛の量を見て恐怖に変わるのに時間はかかりませんでした。指に絡みつく大量の髪の毛を見るたびに血の気が引く思いでしたがそれでもまだ認めたくなくて季節の変わり目だからだろうと自分に言い聞かせて現実逃避をしていました。しかし半年が経過する頃には鏡に映る自分の姿は治療開始前の寂しい頭頂部へと完全に逆戻りしておりいやむしろ以前よりも地肌が透けて見える範囲が広がっているようにさえ感じられ絶望感に打ちひしがれました。せっかく手に入れた自信も髪とともに抜け落ち再び人の視線が怖くなり帽子なしでは外出できなくなってしまいました。慌ててクリニックに駆け込み再治療をお願いしましたが医師からは一度リセットされたヘアサイクルを再び正常に戻すにはまた一からのスタートになると告げられ以前よりも効果が出るまでに時間がかかる可能性があるという厳しい現実を突きつけられました。再開してからは初期脱毛もあり精神的には二重の苦しみを味わいましたが今度こそは二度と自己判断で薬を止めないと心に誓い治療を続けています。この体験を通じて私が学んだことはAGA治療における現状維持がいかに奇跡的なバランスの上に成り立っているかということであり一度手に入れた髪は薬という支えがあって初めて存在できる借り物のようなものであるという事実です。もし今治療を止めようかと迷っている人がいるならば私のようにならないためにもその判断が招く未来を想像し決して安易な道を選ばないでほしいと強く願わずにはいられません。