男性型脱毛症いわゆるAGAの治療において多くの患者が抱える最大の懸念事項の一つが治療を中断した際の再発リスクであり実際に自己判断で薬の服用を止めた途端に恐ろしい勢いで抜け毛が増加し治療前の状態あるいはそれ以上に薄毛が進行してしまったという事例は枚挙に暇がありませんがこの現象には明確な医学的メカニズムが存在しておりそれを理解することは治療継続の重要性を再認識するために不可欠です。そもそもAGA治療薬であるフィナステリドやデュタステリドは薄毛の根本原因であるジヒドロテストステロンという悪玉男性ホルモンの生成を抑制することでヘアサイクルの短縮化を防ぎ毛髪を成長期に留める役割を果たしていますがこれらの薬剤はあくまで対症療法的な側面が強く体質そのものを根本から変えてAGAになりにくい体にするわけではありません。つまり薬を服用している間だけ酵素の働きがブロックされ正常なヘアサイクルが維持されている状態に過ぎないため服用を中止すれば体内の薬効成分は数日から数週間で消失し再び5アルファ還元酵素が活性化してテストステロンと結びつきジヒドロテストステロンが大量に生成され始めます。するとこれまで薬の力によって強制的に成長期を維持されていた毛包たちが一斉に脱毛シグナルを受け取ることになり本来ならば時期をずらして抜けるはずだった髪が短期間にまとめて退行期から休止期へと移行してしまうためあたかもダムが決壊したかのような激しい抜け毛いわゆるリバウンド現象が発生するのです。さらに恐ろしいことにAGAは進行性の疾患であるため治療によって見た目が維持されている期間中も水面下では加齢とともにAGAの発症ポテンシャル自体は高まり続けており薬という堤防で食い止めていた進行圧力が堤防の撤去とともに一気に押し寄せることで治療開始前よりも急速に薄毛が悪化するように感じられることもあります。また発毛促進薬であるミノキシジルを使用していた場合血管拡張作用によって無理やり生かされていた毛細血管が収縮し栄養補給路を断たれた毛母細胞が急速に萎縮するためせっかく生えた産毛や太くなった髪も維持できずに抜け落ちてしまいます。このような再発のメカニズムは人体の恒常性維持機能とホルモンバランスの複雑な相互作用によるものであり一度発症したAGAというスイッチを完全にオフにすることは現代医学でも困難であるという現実を突きつけます。したがって治療を開始するということはある意味で終わりなきマラソンに参加することと同義であり経済的な理由や副作用の懸念などで治療の中断を検討する際には再発という代償がいかに大きいかを十分にシミュレーションし医師と相談の上で減薬などのソフトランディング策を模索することが賢明であり安易な中断は過去の投資と努力を一瞬にして無に帰す行為であることを肝に銘じるべきです。